なぜyutoriはZ世代から絶大な支持を集めるのか?SNSを駆使したブランド戦略を徹底解剖

目次
この記事の結論:yutoriに学ぶSNSブランド戦略5つの要点
創業からわずか5年8ヶ月でアパレル業界最速の上場を果たし、2025年3月期の売上高は前年比92%増の約83億円。yutoriの成長速度は異常値です。私がこの企業のSNS運用とブランド戦略を調べるほど、「従来のアパレルの常識」が通用しない世界が見えてきました。以下の5つが、他社にも応用可能な核心です。
- ブランドアカウント自体をインフルエンサー化する — 企業の公式感を排除し、スタッフの日常や人格が前面に出る運用を徹底。フォロワーは「企業をフォローしている」のではなく「人をフォローしている」感覚になる。yutoriグループ全体のSNSフォロワーは累計約289万人に達している
- Y-League方式でブランドを高速で選別する — 月商700万円未満のブランドは自動撤退。「作って終わり」ではなく「作って検証して残す」仕組みを制度化し、現在38ブランドを運営。5年で70ブランド体制を目指している
- TikTokの「これどこの?」コメントを購買導線に変える — スタッフの日常動画にさりげなく商品を映し、コメント欄の質問に購入リンクで返答する。広告感ゼロの購買体験を設計している
- ポップアップで「投稿したくなる体験」を仕掛ける — オフラインイベントをUGC生成装置として設計。来場者のSNS投稿がそのまま次の集客になるOMO戦略を回している
- 平均年齢20代前半の組織がトレンドを「察知」ではなく「体現」する — 社員の約半数がクリエイティブ職。採用基準にSNS動画制作能力を含め、ターゲットと同世代の社員がコンテンツを作る構造で、共感の純度を担保している
以下では、各テーマを順に解説します。
1. yutoriとは何者か——「古着女子」から始まった異色のアパレル企業

2018年4月、当時25歳だった片石貴展氏がInstagramアカウント「古着女子」の運営からスタートした会社。それがyutoriの原点です。
初年度の売上は約1000万円。そこからD2Cブランド「9090」を立ち上げ、ZOZOグループ入り(2020年)を経て2023年12月に東証グロース市場へ上場。アパレル企業としては国内最速のIPOでした。
上場後も成長は止まりません。2024年8月には元AKB48の小嶋陽菜氏が手がける「Her lip to」の運営会社heart relationを約17億円で買収。ストリートウェアだけでなくフェミニン領域にも進出し、2026年3月期は売上高110億円を計画しています。
私が注目したいのは、この成長の裏側にある「SNSネイティブな組織設計」です。yutoriは最初から実店舗主導ではなく、SNSでのコミュニティ形成を起点にブランドを作る会社として生まれました。この順序が、従来のアパレル企業とは根本的に違います。
参考・引用: yutori片石社長に聞く売上高300億円を見込む成長戦略 - ネットショップ担当者フォーラム yutoriがZOZOから独立し上場 - fashionsnap.com yutoriが17億円でハーリップトゥ運営会社を買収 - WWDJAPAN
2. Y-League方式——ブランドを「育てる」のではなく「選ぶ」仕組み

なぜ多ブランド戦略がZ世代に刺さるのか
yutoriは1つのメガブランドに賭けるのではなく、小規模ブランドを多数立ち上げて市場で検証する方式を取っています。2025年3月期末時点で38ブランドを運営し、5年後の目標は70ブランドです。
この背景にはZ世代の消費行動があります。「みんなが着ているブランド」より「自分だけの発見」に価値を感じる世代にとって、ニッチなブランドの発見体験は購買動機そのものです。
Y-Leagueの具体的な仕組み
ブランド採択後、月次売上でY1~Y5にランク付けされます。Y5(月商700万円未満)に該当するブランドは自動撤退のルールが適用されます。感覚ではなく数字で継続を判断する仕組みが、在庫リスクの限定と成功ブランドへのリソース集中を可能にしています。
この「作って検証して残す」サイクルは、SNSマーケティングとの親和性が高い。新ブランドの立ち上げコストが低いのは、既存のSNSチャネルと物流基盤を共有できるからです。1ブランドあたりの初期投資を抑えつつ、SNSでの反応を見て素早く意思決定できる構造は、他のD2C企業にも参考になるでしょう。
SNSを活用した最新のマーケティング手法と、AIアルゴリズムに評価される投稿設計については「X・Instagram・LinkedInのAI検索最適化:2026年版SNS戦略ガイド」で詳しく解説しています。
参考・引用: yutori片石社長に聞く売上高300億円を見込む成長戦略 - ネットショップ担当者フォーラム yutoriの次世代ブランド育成戦略 - WWDJAPAN Z世代から絶大な支持を受けるyutoriを徹底分析 - note
3. SNS運用の核心——「ブランド=インフルエンサー」という設計思想

Instagramで「企業感」を消す方法
yutoriのInstagram運用で一番目を引くのは、公式アカウントなのにまったく「公式っぽくない」点です。
商品カタログ的な投稿ではなく、スタッフの日常生活の中に自然に商品が溶け込んでいる。コーディネート写真のキャプションも、ブランドの公式コメントというより個人の感想に近い語り口です。この「ブランドアカウント自体がインフルエンサーのように振る舞う」設計は、フォロワーとの距離を縮める効果を生んでいます。
短尺動画(Reels)やStoriesではトレンド音源を積極的に使い、視聴完了率を高める工夫をしている点も見逃せません。15〜30秒の短尺で「最後まで見たくなる」構成を意識し、保存やDM共有を誘発する仕掛けを入れています。
TikTokの「これどこの?」を売上に変換する
私がyutoriのSNS戦略で最も秀逸だと感じるのは、TikTokのコメント欄を購買導線に活用している点です。
スタッフが日常のルーティン動画を投稿する。さりげなく着ている服が「9090」のアイテム。視聴者から「これ何のブランド?」「どこで買える?」とコメントが入る。そこに購入リンクを返す——この流れは完全にオーガニックで、広告っぽさがゼロです。
片石社長自身がカンファレンスで「TikTokのコメントから服が売れる」と発言しているように、これは偶然ではなく設計されたUGC戦略です。「宣伝されて買う」のではなく「発見して買う」体験を作ることで、Z世代の広告嫌いというハードルを乗り越えています。
LinkSurgeのSNS分析でも、Z世代向けブランドのAI検索での引用率はSNS上のUGC量と強い相関があることが確認されています。「売り込まない」SNS運用が、結果的にブランドの検索露出も高めるわけです。
参考・引用: 年商30億円間近のyutoriが語るTikTokのコメントから服が売れる理由 - アプリマーケティング研究所 yutoriに学ぶZ世代の心を掴むSNSマーケティング事例 - apparel01.com Instagram企業アカウント運用事例 - real-us.co.jp
4. ポップアップとOMO——オフラインを「UGC生成装置」にする

なぜポップアップがSNS戦略の延長線上にあるのか
yutoriの売上の過半はECですが、リアル店舗への投資も加速しています。2025年3月期末時点で46店舗(前年比2倍)に拡大。さらに9090ブランドは上海ポップアップで海外市場にも進出しました。
ここで注目すべきは、ポップアップの目的が「その場で売ること」だけではない点です。来場者が「来たこと自体をSNSに投稿する」ことまで設計に組み込まれています。限定アイテム、フォトスポット、スタッフとの交流——これらはすべて「投稿したくなる体験」であり、参加者のUGCがそのまま次の来客を呼ぶ循環を生みます。
オンライン(EC+SNS)で認知を広げ、オフライン(ポップアップ)で体験を深め、その体験がまたSNSに投稿されてオンラインに還流する。このOMO(Online Merges with Offline)ループこそ、yutoriのマーケティングの全体像です。
AI検索エンジンがSNS上のブランド言及を重視する傾向は強まっており、UGCの総量がAI引用率に直結する時代が来ています。SNSでのブランド言及とオフサイトSEOの関係については「91%のAI回答は自社サイト以外から——オフサイトSEOとGEO戦略」で解説しています。
参考・引用: yutori 9090 上海初進出POPUP好調 - PR TIMES yutori 2025年3月期決算 - fashionsnap.com yutoriのD2C+OMO戦略分析 - note

LinkSurge
linksurge.jp
SEO・AIO・GEO統合分析プラットフォーム。AI Overviews分析、SEO順位計測、GEO引用最適化など、生成AI時代のブランド露出を最大化するための分析ツールを提供しています。
5. 組織設計——「Z世代がZ世代に売る」構造

平均年齢23.8歳の組織が持つ本質的な強み
yutoriの社員は約180名で、平均年齢は23.8歳。社員の約半数がクリエイティブ系の職務に従事しています。
この組織構成は単なる「若い会社」ではありません。ターゲット(Z世代)と同じ世代がコンテンツを制作するため、「Z世代に刺さるコンテンツとは何か」をリサーチする必要がない。自分たちの感覚がそのまま市場のセンサーになる構造です。
採用基準に「SNS動画制作力」が含まれている
yutoriの採用で特徴的なのは、「売るセンス」やSNS動画制作能力を明確に評価する点です。マーケティング部門だけでなく、ブランドに関わる全員がコンテンツクリエイターとしての能力を持つことで、外部のクリエイティブエージェンシーに頼らない高速なPDCAが実現しています。
片石社長は「終身雇用が最高でしょ」と発言しており、短期離職が多いスタートアップ業界の中で長期的な組織づくりを志向しているのも興味深い点です。若さとスピードを武器にしつつ、人材の定着にもコミットしている。この両立が、トレンドの波に乗り続けるための土台になっています。
参考・引用: 片石社長のyutori経営「終身雇用が最高でしょ」 - WWDJAPAN 急成長アパレルyutori社長 片石氏に聞く - 日経クロストレンド yutori Wantedly企業ページ
6. yutori戦略から他社が学べる5つの施策
yutoriの事例は「若い会社だからできた」で終わらせるにはもったいない。SNSマーケティングの観点から、業種を問わず応用可能な施策を整理します。
施策1: ブランドアカウントに「人格」を持たせる
企業の公式感を消し、アカウントの「中の人」の人格を前面に出す。投稿のトーンを統一しつつ、商品紹介よりもスタッフの日常を優先する運用に切り替えるだけで、エンゲージメント率は大きく変わります。
施策2: コメント欄を購買導線として設計する
TikTokやInstagramで「これどこの?」と聞かれる投稿を意図的に作り、コメント返信で自然に商品リンクを届ける。広告予算ゼロで購買を生むこの手法は、飲食・コスメ・インテリアなど幅広い業種で再現可能です。
施策3: 小規模テスト→数字判断→撤退/拡大のサイクルを回す
Y-Leagueのような定量基準を設け、感覚ではなく数字でプロジェクトの継続を判断する。ECやSNSの施策すべてに適用できるフレームワークです。
施策4: オフラインイベントをSNS投稿の「素材」にする
ポップアップやイベントの企画段階で「来場者が何をSNSに投稿するか」を設計する。フォトスポット設置、限定商品、スタッフ交流など、投稿動機を複数仕込むことがポイントです。
施策5: ターゲット世代の人材を採用し、コンテンツ制作を内製化する
外部クリエイターへの発注ではなく、ターゲットと同世代の社内メンバーがコンテンツを作る体制を構築する。「リサーチして寄せる」のではなく「自然に分かっている人が作る」ほうが、共感の質が段違いになります。
LinkSurgeのAI Overview分析を使えば、自社ブランドがAI検索でどの程度言及されているかをキーワード単位で確認できます。SNS施策の成果がAI検索にどう波及しているかを可視化することで、投資判断の精度が上がります。
参考・引用: yutoriに学ぶ次世代ブランド育成戦略 - WWDJAPAN Z世代がビジネスを変える:yutoriから学ぶマーケティングの新常識 - note yutoriの成長戦略を分析 - CBOラボ
7. yutori戦略の限界とリスク
成長企業の事例を紹介する以上、リスクにも触れておきたいと思います。
ブランド希薄化のリスク — 38ブランドを同時に運営するということは、個々のブランドストーリーが浅くなるリスクと表裏一体です。Y-Leagueの撤退ルールで在庫リスクは限定されますが、「ブランドを育てる」より「ブランドを試す」に偏りすぎると、長期的なファン層の蓄積が弱くなる可能性があります。
若年組織のガバナンスリスク — 平均年齢23.8歳のスピード経営は強みですが、SNS炎上対応やコンプライアンス管理では経験値の不足がリスク要因になり得ます。公開情報では炎上事例は確認されていませんが、事業拡大に伴いリスク管理体制の強化は避けて通れないテーマでしょう。
トレンド依存の脆弱性 — Z世代のトレンドは回転が速く、今日の人気ブランドが半年後も同じ勢いを保てる保証はありません。多ブランド体制はこのリスクの分散策でもありますが、全体として「常にトレンドの最前線にいなければならない」というプレッシャーは経営に負荷をかけ続けます。
こうしたリスクを含めてもなお、yutoriの仕組みは「仕組みとして再現可能」な要素が多い点が評価できます。
よくある質問(FAQ)
yutoriの主力ブランド「9090」とはどんなブランド?
2018年にスタートしたオールドカルチャーMIXのストリートブランドで、1990年代〜2000年代のユースカルチャーをコンセプトにしています。yutoriグループの中で最も知名度が高く、2025年には上海ポップアップで海外進出も果たしています。
Y-Leagueとは何ですか?
yutoriが採用しているブランド評価制度です。ブランドを月次売上に応じてY1〜Y5の5段階にランク付けし、Y5(月商700万円未満)に該当するブランドには自動撤退ルールが適用されます。感覚ではなく定量基準で事業判断を行う仕組みです。
なぜyutoriのSNS運用はZ世代に刺さるのか?
ターゲットと同世代(平均年齢23.8歳)の社員がコンテンツを制作しているため、「共感」の質が本質的に高い点が最大の要因です。加えて、公式アカウントに「人格」を持たせ、商品紹介より日常コンテンツを優先する運用方針が、広告を嫌うZ世代の信頼を獲得しています。
yutoriの戦略は他業種にも応用できる?
ブランドアカウントの人格化、コメント欄を活用した購買導線、定量基準によるプロジェクト選別(Y-League方式)、オフラインイベントのUGC設計——これらの施策は業種を問わず応用可能です。特にD2CやEC事業者にとっては、低コストで始められるものが多いでしょう。SNSの効果測定にはLinkSurgeなどの分析ツールを活用し、AI検索での引用状況も併せてモニタリングすることをおすすめします。
まとめ:yutoriに学ぶ「SNSファーストの経営」
yutoriの成功は、単なるSNSマーケティングの巧さではなく、SNSを中心に据えた経営設計全体にあります。組織、採用、ブランド管理、商品開発——すべてがSNSでの反応を最速でキャッチして行動に移すために最適化されている。
まず始められることは3つです。自社のSNSアカウントに「人格」を持たせること。TikTokやInstagramのコメント欄を購買導線として活用すること。そしてプロジェクトの継続判断にY-League的な定量基準を導入すること。
SNS施策とAI検索は連動しています。LinkSurgeのAI Overview分析機能を使えば、SNSでのブランド露出がGoogle AI Overviewsでの引用にどう波及しているかをリアルタイムで確認できます。
