ChatGPTのクエリファンアウトは今どうなっているか — 2.17本から7.61本へ増え、そして見えなくなった

目次
この記事の結論:ファンアウトは「消えた」のではなく「増えたうえで見えなくなった」
2026年の春まで、私はChrome DevToolsのネットワークタブでChatGPTの内部検索クエリを眺めながら、クライアントのコンテンツがどのサブクエリで拾われているかを確認していました。夏にはそれができなくなりました。同時に、ファンアウトそのものは3倍以上に増えています。要点は次の5つです。
- ファンアウトの本数は3倍以上に増えた — Lily Rayの2026年8月の観測では、1プロンプトあたりのファンアウト数が2.17本から7.61本へ、単一クエリで処理される比率は94%から43.5%へ変わりました。MJ Cachónのブランド系プロンプト調査では1回の実行あたり平均2.6本、同じプロンプトを4回実行したときの重複を除いた累積では平均10.3本です
- サブクエリは会話インターフェースから見えなくなった — 2026年半ば、GPT-5.3が既定になった時点で応答JSONから
search_model_queriesが消え、5.4では確認できませんでした。Little Green Agencyの更新によるとGPT-5.6では再び表示されており、可視性はモデルごとに変わります - APIでは今も取得できる — OpenAIのResponses APIでWeb検索ツールを使うと、応答の
action.queries配列にサブクエリが入ります。自社カテゴリの質問がどう分解されるかは、この経路で調べられます - サブクエリの形式には明確な癖がある — ブランド系プロンプトではサブクエリの93.4%にブランド名が含まれ、30.2%に
site:演算子(その55.1%は自社ドメイン対象)、23.8%に完全一致のクォート、19.6%に年号が付きます。国際的なブランドではサブクエリの27.3%に英語語彙が混ざります - 見えない前提の対策は「受け皿の網羅」と「定点観測」 — サブクエリを追いかけるのではなく、想定される分解パターン(関連トピック・暗黙の疑問・比較・最新性・言い換え)ごとに見出しブロックを用意し、言及率と引用元を週次で記録する設計に切り替えます
以下では、何が起きたのかを時系列で追い、APIでの取得手順と対策を解説します。
1. ファンアウトとは何か、ChatGPTではどう動くか

クエリファンアウトは、AIがユーザーの1つの質問を複数のサブクエリに分解し、並列に検索してから結果を統合する仕組みです。Google AI Modeで広く知られるようになりましたが、ChatGPT searchも同じ考え方で動いています。
Ahrefsが2026年3月に整理したファンアウトの型は5つあります。
| 型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 関連トピック | 文脈を補う近接テーマ | 「作り置き容器」→「簡単な作り置きレシピ」 |
| 暗黙の疑問 | ユーザーが口にしていない懸念 | 「太陽光パネル」→「設置費用」「工期」 |
| 比較 | 並列評価 | 「AsanaとMondayの違い」 |
| 最新性 | 時間に敏感な検索 | 「おすすめスマホ 2026」 |
| 言い換え | 同じ意図の別表現 | 「離脱率を下げる」→「訪問者を留める」 |
同じ分析では、ファンアウトで生成されるクエリの95%以上は繰り返し検索されることがなく、検索ボリュームを基準にした最適化が成り立たないことも指摘されています。Google側の仕組みの全体像は「クエリファンアウトとは?初心者向け解説」で扱っています。
ChatGPT固有の話は、ここから先です。
参考・引用: What is Query Fan-Out? Understanding the Hidden Queries Driving AI Search - Ahrefs
2. 2026年夏に何が変わったか
本数が3倍以上に増えた
Lily Rayが2026年8月17日に公開した観測は、モデル更新の前後を比較したものです。
| 指標 | 更新前 | 更新後 |
|---|---|---|
| 単一クエリで処理される比率 | 94% | 43.5% |
| 1プロンプトあたりのファンアウト数 | 2.17本 | 7.61本 |
| 取得されるソース数 | 約12 | 約24 |
site: 演算子を含む比率 | 0.3% | 約23% |
率直に言って、この変化は「ChatGPTがGoogle AI Modeに近づいた」と表現するのが正確だと思います。Ahrefsの調査ではAI Modeのサブクエリは59%が5〜11本、24%が12〜19本でしたから、ChatGPTの7.61本という平均はその範囲に入ってきました。
同時に、見えなくなった
Little Green Agencyが2026年7月2日に公開した記事によると、以前はChrome DevToolsのネットワークタブで会話IDを検索し、応答JSONの search_model_queries フィールドを開けばサブクエリを確認できました。同記事によると、GPT-5.3が既定モデルになった時点でこのフィールドは検証した会話インターフェースから消え、GPT-5.4でも確認できませんでした。その後の同記事の更新では、GPT-5.6で再び表示されるようになったとされており、可視性はモデルのバージョンによって変わります。
つまり、ファンアウトは増えながら、モデルによってはユーザー側から安定して観測できなくなりました。SEO担当者にとっては、「何が起きているかは分かるが、自社がどのサブクエリで拾われているかは直接見えない」状態です。
参考・引用: What We Can Learn from Evolving ChatGPT Fan-Out Queries - Lily Ray ChatGPT Has Hidden Its Fan-Out Queries. Here's How to Get Them Back with n8n - Little Green Agency
3. サブクエリの形式:ブランド系プロンプトの実測
見えなくなったとはいえ、API経由の調査でサブクエリの癖は分かっています。MJ Cachónが2026年8月25日に公開した調査は、医療・スポーツ小売・ホテルの3プロジェクトで189本のブランド系プロンプトを723回実行し、OpenAIのAPI経由でサブクエリを収集したものです(GPT-5.5、2026年8月)。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 1実行あたりのサブクエリ数(平均・最大) | 2.6本・13本 |
| 同じプロンプトを4回実行したときの重複を除いたサブクエリ数(平均) | 10.3本 |
| ブランド名を含むサブクエリ | 93.4% |
site: 演算子を含む | 30.2% |
| うち自社ドメイン / グループ / 第三者 / 競合 | 16.6% / 7.9% / 5.6% / 0.1% |
| 完全一致のクォート("...")を含む | 23.8% |
| 年号を含む | 19.6% |
| 英語語彙を含む(全体 / 国際的なブランド) | 8.9% / 27.3% |
| 2回以下の検索で完結する実行 | 63.9% |
私が注目したのは3点です。第一に、サブクエリの69.8%は通常検索ですが、site: 付きのもの(30.2%)の55.1%は自社ドメインを対象にしており、競合サイトを見に行くことはほぼありません。ブランド系プロンプトでは、全体の16.6%が公式サイトを名指しした検索になります。第二に、完全一致のクォートと年号が2割前後に付くため、固有名詞と年号を本文と見出しに明示しておくことが受け皿になります。第三に、国際的なブランドではサブクエリの4分の1以上に英語が混ざります。Ahrefsの日本市場データで英語版Wikipediaが日本語版より上位に来ている現象とも整合し、日本語だけのサイトは英語のサブクエリから見つからないことを示唆しています。
参考・引用: A study of query fan-out in ChatGPT using brand searches - MJ Cachón AI が引用する日本のドメインランキング 2026 年 6 月版 - Ahrefs

LinkSurge
linksurge.jp
SEO・AIO・GEO統合分析プラットフォーム。AI Overviews分析、SEO順位計測、GEO引用最適化など、生成AI時代のブランド露出を最大化するための分析ツールを提供しています。
4. 見えないサブクエリをAPIで取得する
会話インターフェースからは安定して見えなくなりましたが、OpenAIのResponses APIでWeb検索ツールを有効にすると、応答にサブクエリが含まれます。自社カテゴリの代表的な質問がどう分解されるかを調べる用途であれば、この経路で十分です。
手順
- OpenAIのAPIキーを用意し、Responses APIにWeb検索ツールを有効にしたリクエストを送る
- 応答の出力項目のうち、Web検索の呼び出しを表す項目を探す
- その中の
action.queries配列に、実際に実行されたサブクエリが入っている - 同じプロンプトを複数回実行し、サブクエリの分布を取る(1回では偏る)
Little Green Agencyはn8nのHTTPリクエストノードでこの処理を自動化する手順を公開しています。手作業なら、代表的なプロンプト10〜20本を各5回ずつ実行して、サブクエリの型(関連トピック・暗黙の疑問・比較・最新性・言い換え)ごとに分類すれば、自社に必要な受け皿の一覧ができます。
注意点
- APIのモデルとChatGPTのWeb版は、同じ質問でも分解の仕方が完全には一致しません。傾向を掴む用途に留めてください
- サブクエリは実行ごとに変わります。1回の結果で「このサブクエリに最適化する」と決めると外れます
- 取得された(読まれた)ことと引用されたことは別です。サブクエリで拾われても、回答に引用されるとは限りません
5. 見えない前提での対策
サブクエリが見えなくなった以上、対策の軸は「サブクエリを追う」から「分解パターンの受け皿を網羅する」と「結果を定点で記録する」に移ります。
受け皿の網羅
1つのテーマについて、5つの型それぞれに対応する見出しブロックを用意します。例えば「AI引用の計測ツール」というテーマなら、次のような見出しが受け皿になります。
- 関連トピック:「AI引用率とは何を指すか」
- 暗黙の疑問:「計測にかかる費用と頻度」
- 比較:「Google AI OverviewsとChatGPTで計測方法はどう違うか」
- 最新性:「2026年9月時点で対応しているAI媒体」
- 言い換え:「AIに言及されているかを調べる方法」
各見出しの直下には40〜60語で完結する回答を置きます。当社のGoogle AI Overviews実引用277件の解析では、引用の69.3%がリード文以外の見出しブロックから発生していました。この調査はGoogle AI Overviewsが対象でChatGPTを直接測定したものではありませんが、同じ方向に効くという仮説のもとで受け皿を設計しています。調査の詳細は「AI検索は記事のどこを引用するのか」をご覧ください。
公式サイトを名指し検索に耐える構造にする
site: 付きサブクエリの半分以上が自社ドメインを対象にしている以上、公式サイトの中で製品・料金・比較・FAQが見出し単位で見つかる必要があります。Lily Rayは、公式ドメインの最適化と、メタディスクリプションでの「公式」の明示、Search Consoleでの site: クエリの監視を推奨しています。
英語の受け皿を検討する
国際的なブランドではサブクエリの27.3%に英語が混ざり、日本市場のChatGPT引用元でも英語版Wikipediaが上位に入ります。海外展開の有無にかかわらず、主要ページの英語要約を用意することは、英語のサブクエリからの流入経路を作る施策になります。
言及率と引用元を週次で記録する
サブクエリは見えなくても、結果は見えます。自社カテゴリの質問20〜30本に対するChatGPTの回答で、自社が言及・引用される比率と、引用されたドメインを週次で記録してください。回答は実行ごとに変わるため、複数回の記録が要ります。LinkSurgeのGEOモニタリングでは、ChatGPT Search・Gemini・Google AI Overviews・Claude・Perplexityの5媒体に監視クエリを登録し、言及の有無、言及位置、引用URL、競合との比較を記録できます。私たちもこのシリーズの効果測定に同じ仕組みを使っています。
対策の全体像は「ChatGPTに引用される方法 完全ガイド」を、内部構造は「ChatGPT検索の内部構造」をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
ChatGPTのクエリファンアウトとは何ですか?
ChatGPTがユーザーの1つの質問を複数の内部検索クエリ(サブクエリ)に分解し、それぞれで検索してから結果を統合する仕組みです。Lily Rayの2026年8月の観測では、1プロンプトあたり平均7.61本のサブクエリが生成され、単一クエリで処理される比率は43.5%まで下がっています。
ChatGPTのサブクエリはなぜ見えなくなったのですか?
2026年半ば、GPT-5.3が既定モデルになった時点で、検証された会話インターフェースの応答JSONから search_model_queries フィールドが消え、GPT-5.4でも確認できませんでした。以前はChrome DevToolsのネットワークタブでこのフィールドを開くことでサブクエリを確認できました。Little Green Agencyの更新によるとGPT-5.6では再び表示されており、可視性はモデルごとに変わります。OpenAIは理由を公表していません。
ChatGPTのサブクエリを今でも確認する方法はありますか?
OpenAIのResponses APIでWeb検索ツールを有効にすると、応答の action.queries 配列に実行されたサブクエリが含まれます。同じプロンプトを複数回実行して分布を取る使い方が実務的です。ただしAPIのモデルとChatGPTのWeb版では分解の仕方が完全には一致しないため、傾向の把握に留めてください。
ChatGPTのサブクエリにはどんな特徴がありますか?
MJ Cachónの2026年8月の調査(ブランド系プロンプト189本、723回実行)では、1回の実行あたり平均2.6本、同じプロンプトを4回実行したときの重複を除いた累積で平均10.3本のサブクエリが生成され、93.4%にブランド名、30.2%に site: 演算子、23.8%に完全一致のクォート、19.6%に年号が含まれていました。site: の対象は主に自社ドメインで、競合サイトはほぼ対象になりません。国際的なブランドでは27.3%に英語語彙が混ざります。
サブクエリが見えない状態で、何を対策すればいいですか?
関連トピック・暗黙の疑問・比較・最新性・言い換えの5つの分解パターンごとに見出しブロックを用意し、各見出しの直下に完結した回答を置きます。公式サイト内で製品・料金・比較・FAQが見出し単位で見つかる構造にし、固有名詞と年号を明示します。そのうえで、ChatGPTでの言及率と引用元ドメインを週次で記録し、変動を前提に調整します。
まとめ:追いかけるのをやめて、受け皿を並べる
ChatGPTのファンアウトは、2026年夏に2.17本から7.61本へ増え、同時にモデルによっては会話インターフェースから安定して見えなくなりました。サブクエリの形式には、ブランド名・site:・完全一致・年号・英語という明確な癖があり、APIを使えば傾向は今も掴めます。
見えないものを追いかける代わりに、5つの分解パターンの受け皿を見出し単位で並べ、公式サイトを名指し検索に耐える構造にし、結果を週次で記録する。この設計に切り替えれば、次にファンアウトの仕様が変わっても対応の軸はぶれません。
LinkSurgeのGEOモニタリングでは、ChatGPT Searchを含む5媒体での言及と引用元を定点で記録できます。受け皿となる見出し構造の点検にはAI Ready診断をあわせてお使いください。


